小説:『理解』:テッド・チャン

90年代SF傑作選〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

90年代SF傑作選〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

90年代SF傑作選〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

90年代SF傑作選〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)


最高に面白い短編が連なる。
中でも、テッド・チャン著の『Understand(邦題:理解)』が良い。


わたしはその“ことば”を、そしてそれによって操作される意味を了解し、
かくしてわたしは崩壊する。


内容は、事故後に手術を受けた男性が、投薬の副作用で知能が革新的に向上する、
というもの。
最初は『アルジャーノンの花束を』を思い出したが、
展開される物語はまったく異なるものだった。
本作品の特徴は、圧倒的なスピード感にある。
まるで、読者の精神内で革命が起きているかのように、
具体的事柄が駆け抜けていく。
まさしく「疾走」と感じられる読書体験は、ほかに類を見ない。
本書の副作用として、読後に自身の知能が向上したように感じられる。
当然、勘違いなのだが。



もうひとつ、すばらしい短編がダン・シモンズの『フラッシュバック』だ。
フラッシュバックと聞くと、アジカンが思い出されるので、非常に好ましい。
細胞膜ってすばらしい、みたいな。
ダン・シモンズは未だに『ハイペリオン』も『イリアム』も読めていないのが、
ようやく一つの作品を読み終えることができた。
この調子で、SFではなくて、ハードボイルド路線の作品群を読んでみようかと思う。


まるでフラッシュバックをやっているみたいだ。
悲しい未来に、フラッシュバックでこの時を再体験しているような気分だった。


「フラッシュバック」という、過去を再体験できる薬物に依存した世界の物語。